「教科書で覚えた名詩」(文藝春秋編)

詩の懐メロヒットメドレー

「教科書で覚えた名詩」(文藝春秋編)文春文庫PLUS

「本書こそが正真正銘、
詩の味わい方の入門書です。」と、
前回、谷川俊太郎の
「詩ってなんだろう」(ちくま文庫)を
紹介しました。
本書もまた、
詩の入門書としての一冊です。
いや、
詩の「ベスト盤」といえるものです。

書名の通り、
教科書に載った詩を中心に、
どこかで見たこと聞いたことのある詩が
満載です。

オープニングを飾っている詩は、
小学校のとき、
教室の黒板の上のスペースに
デカデカと掲示されていた
記憶があります。
子ども心に、この詩が
日本を代表する詩人の詩なのだと
感じていました。

 僕の前に道はない
 僕の後ろに道は出来る

 (高村光太郎「道程」)

たしか、この詩の冒頭の二節は、
小学生のとき、
TVのCMか何かで
覚えた記憶があります。
三節目以降を知ったのは、
高校生になってからでした。

 雨ニモ負ケズ
 風ニモ負ケズ

 (宮沢賢治「雨ニモ負ケズ」)

先日書きましたが、
学生時代には相性が良かったのに、
今ではよそよそしく
感じられてしまうこの詩人の作品。

 幾時代かがありまして
 茶色い戦争ありました
 幾時代かがありまして
 冬は疾風吹きました

 (中原中也「サーカス」)

そして何よりも、
大学時代に出会い、読んだ途端、
いきなり胸ぐらをつかまれ
びんたを食らわされたような
感覚を覚えたこの詩。

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて

 (中略)
 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ

 (茨木のり子「自分の感受性くらい」)

そのほかにも短歌、俳句、漢詩など、
「あっ、これ教科書に載ってた!」と
思わずつぶやいてしまいそうな
一冊です。

 万緑の中や吾子の歯生え初むる
 (中村草田男)

 田子の浦ゆうち出でて見れば
 ま白にそ
 富士の高嶺に雪は降りける

 (山部赤人)

いやあ、懐かしいですね。
詩のベスト盤、いや、
詩の懐メロヒットメドレー、
中学生にも高校生にも、
疲れたおじさんにも、
薦めてしまいます。

(2018.12.21)

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